週明けに降った大雪がまだ少し残る東京駅に到着。
何と、1914年の創設当時の姿に復元されたのでした。
以前は、戦災で三階部分が吹っ飛んでしまっていたんですね。
それを、僅かな資料をたよりに忠実に再現。
しかし、百年前にこんな建造物が突然に、あらわれたなんて、当時の人達はどんなにびっくりしたでしょうね。
皇居の近くってことでこのロケーションになったそうですよ。
よくみると、ほらこんな風にタイルの色が新しいところと古いところの境目がわかる。
でも、雑誌等のデータからすると、レンガではなく「タイル」とみるけどどうかな?いくらなんでもレンガ積みをやるかな、今。
全体的には違和感は全然ない。
改札をでたところの天井もこんな風に。
共用部分と、ホテルの客室内装の基本デザインはロンドンのリッチモンド・インターナショナルによるもの。
ホテルのホスピタリティでは有名な事務所。
いわゆる、「ヨーロピアン・トラディショナル」ってことになるんでしょうね。
今回の小旅行の目的の一番はこのヨーロッパスタイルを学ぶことにある。
レセプションからつながる廊下。これいい。
白、白、白。床も壁も天井も。ブラケット照明がスパイスになってる。
エレベーターホールの天井。折上げ部に金箔調のクロスを貼ってる。これいただきだ。モールディングの使い方にも注目。
共用部はだいたいこんな感じ。
諸事情によりホテルは泊まれないから、共用部のみね。ああ、泊まりたかった。
このチェストすごいな。前面ミラー貼り。やっぱ、発想が日本人ばなれしてるは。あたりまえだけど。
トイレもすごいことになっていた!これ共用トイレ?もったいない。
気になるディテールは・・・他のお客様の迷惑にならないようにこっそりと採寸。病気。
「神はディテールにやどる。」ってだれの言葉だったけなあ・・・。サーリネン?ライト?・・・ミース?
そんなこと思い浮かべながら、興奮気味で建物散策するのが、なによりも楽しい!
このへんは商業ゾーン。
シンプルながら、トラッドでいい。
つかれたのでトラヤで少し休憩。
ちょっと、ぶれたけど、撮影もOKということで。
創建当時のレンガ積みがのこる壁をじっと見る、見る、見る・・・。
レンガの長手と木口を一段づつ、交互に積み上げる「イギリス積み」という積み方のようです。
こうすることで、強度の高い壁ができあがるとともに、レンガの数量を削減する効果があるとか。
黒いところは木レンガ。下地にしたのかな・・・。
もう一回外にでてみる。こんな寒い中おじさんが絵を書いてる。
東京駅が好きなんだね。気持ちよくわかる。でも、いくらなんでも寒くないのかな。まだ雪がこんなに・・・。
興味あるから近づいてみることにした。
おお。やっぱりすばらしいドローイングだ。鉛筆画かな。
この男性。突然私に話しかけてこられまして。
「私は、東京駅の美観を保存するために戦う運動家です。」との熱すぎる自己紹介。
「駅の周辺の、不必要な構造物を撤去するために、こうして活動している。」
つづけて、私も共感してしまって、30分ほど東京駅のどこが美しいのかで立ち話でもりあがる。
しかし、この男性も「ところどころ、にせものくさいところが気になる。」とのご指摘でしたが。
私なりに(一応建築設計を志すものの、はしくれとして)講釈をのべさせていただきました。
第一に、窓がアルミサッシであることが残念。これは大きい。
最新のペアガラスの二重サッシになっていましたが、やはり、ホテルですから、隙間風があったんじゃだめだよね。
でも、スチールのサッシにしてたら、窓廻りはもっとすっきりと、シャープに仕上がっていたと私は思う。
鉄はアルミの型材なんかより薄く、細く造っても強度がでるからね。でもさびる。
窓は人間の顔でいったら「眼」にあたる部分。一番重要。
第二に先ほどのべましたように、3開部分以上が、レンガ積みではなくタイル張りであること。
陶器タイルの質感も悪くはありませんが、レンガには劣る。
レンガ積んでほしかったなあ・・・。せっかく「復元」なんだから、でも現行の建築基準法では不可かな。
内部を観察してわかりましたが、この「復元」は、一部現場打ち鉄筋コンクリートの壁と梁で補強された上に
屋根部と新しい壁なんかは、鉄骨フレームとみました。
この辺の、眼に見えない部分ではありますが、「何かが、少し、違うっていう感覚につながっていくと私は思うよ」って、この男性にお話しさせていただきました。僭越ながら。
最後に、男性からこの絵のコピーを頂きまして。
「いくらか、お支払いしたいのですが、おいくらくらいですか?」って聞きましたらば。
「じゃあコピー代、三枚で三十円。」というご回答。
それではいくらなんでもふざけているので、活動資金として、三百円お支払いしてまいりました。それでも少ないかもしれませんが。
これがそのコピー。
ほんと、大事にさせていただきますね。
東京駅に行かれた方はぜひ、この男性をさがしてみましょう。
そして忘れていけない、リッチモンド・インターナショナルのデザインニング・ホスピタリティもやはり、最高だった。
世界最高だと思う。
でも、なんとか自分なりに消化して、自分の仕事に積極的に取り入れたい要素がたくさんあったと思う。できるはず。
そんなところで、とりあえず東京紀行「前編」終わります。